記録用ブログ

個人的な記録のためのブログ。主にソフトウェアテストの話題。

Kano Modelに関係しそうな文献を読んだメモ(魅力的品質要素など)

今年もソフトウェア品質シンポジウム (SQiPシンポジウム)の季節がもうすぐ。今年2023年の基調講演は「Kano Modelから品質について学ぶ!」。
開催概要・申込み | ソフトウェア品質シンポジウム 2023

せっかくなので予備知識をつけて聞きたいと思い、狩野モデル(Kano Model)に関係しそうな文献を読んで、少し予習をしてみました。
読んだ文献→気づいたこと・考えたこと、の順序でメモしてみます。

読んだ文献

昔読んで、再度読み直したものも入っています。
一部例外はありますが、ほとんどが、狩野 紀昭さんの論文・雑誌記事です。

  • 魅力的品質と当り前品質
    • 狩野 紀昭, 瀬楽 信彦, 高橋 文夫, 辻 新一(著)
    • 品質 1984 年 14 巻 2 号
  • Viewpoint this month(第112回)米国で「狩野モデル」の着想を得る ベースはお客とメーカーが対話できる「品質要素」
    • アイソス = ISOS : マネジメントシステムと国際標準化の専門月刊誌 26(7)=284:2021.7 p.8-13
  • 私が伝えたいTQMのDNA (特集 TQMのDNA)
    • 品質 = Quality : journal of the Japanese Society for Quality Control 36(4) (通号 141) 2006 p.413~417
  • 特別寄稿 日本が直面する品質危機
    • 大和レビュー (9) 2003.新春 p.4~13
  • ジュラン博士の日本の品質革新へのご貢献を振り返る (追悼 ジュラン博士)
    • クオリティマネジメント = Quality management 59(5) (通号 762) 2008.5 p.52~57
  • 追想録 ミスターQC 米山高範  第3部 米山高範さんの素顔と語録「米山哲学」  第4章 米山モデル

ほかに数件、この機に目を通しました。興味深い話は多かったのですが、この投稿に直結していないものは割愛します。

また、著者が狩野 紀昭さん以外の文献で確認したものは、以下。いずれも書籍。

  • ソフトウェア・ファースト, 及川卓也著, 日経BP社, 2019年
    • 2章 IT・ネットの“20年戦争”に負けた日本の課題と光明
      • 要因3:サービス設計〜運用面での誤解
  • 【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology), DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 (著), ダイヤモンド社, 2009年
    • 第1章◎モチベーションとは何か

気づいたこと、考えたこと

オチはないです。気づいたこと、考えたことを挙げていきます。

  • 論文「魅力的品質と当り前品」で提唱されている品質要素は魅力的品質要素・当り前品質要素・一元的品質要素だけではありません。充足度合いが満足にも不満にも繋がらない無関心品質要素、充足が不満を引き起こし不充足が満足を引き起こす逆品質要素も挙げられています。

    • 魅力的・当り前・一元的品質要素の使い勝手が良い(?)せいか、この3つしか扱っていない資料も見たことがあります。
    • 個人的には、充足していることが不満につながる「逆品質要素」は面白い考え方だと思います。ただ、たとえば多機能であることは充足しているように見えるがシンプルさという側面ではマイナスになると考えると、一言的品質要素とはっきり区別するのは難しいような気もしてモヤモヤ。
  • 魅力的だと思われているものが、やがて当り前になってしまうことがあるように、品質にはライフサイクルがあります。

    • 品質要素が時とともに変わっていく話は、書籍「ソフトウェア・ファースト」の2章の要因3に、具体例を交え分かりやすく説明されています。
  • 複数の文献から、扱われている「品質」がモジュール単位、統合テストをする単位、というよりは、製品あるいはサービス全体の品質であるように感じました。

    • つまり、プロダクト組織全体や、その周りも含んだ活動で支えられているようなカバー範囲の広い品質を対象にしているように見えます。  
      • 例えば、品質危機を起こすものとしてコスト重視や教育予算削減を取り上げられており、品質危機の克服に経営者のリーダーシップを求めています。企業文化の話なども考慮されていそう。
      • 論文「魅力的品質と当り前品質」にテレビの品質の話が登場しますが、品質要素のひとつに「使用説明書」が登場することからも、製品やサービス全体を対象にした考えなのだろうと思います。
  • ハーズバーグの動機付け衛生理論(M-H理論)を参考にしている模様。

    • ハーズバーグの動機付け衛生理論は、仕事への満足を生む要因と、仕事への不満足をうむ要因は別、という説です。まさに魅力品質・当たり前品質にも当てはまる話。
      • 更に、そもそも欲求も、成長や昇進といった動機付け要因(motivator、満足の要因)と、給与や人間関係といった衛生要因(hygiene factors、不満足の要因)の2種類に分けられるとされます。
    • ハーズバーグの動機付け衛生理論は入手しやすい資料がなかなか見つけられなかったのですが、書籍「【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology) 」の第1章「モチベーションとは何か」に出ていました。
      • 同書から、気になった部分を引用。「人間は、衛生要因が満たされなければ不幸になるとはいえ、鎮痛剤のように一時的な苦痛から解放してくれるだけで、より深い満足感が得られなければ、一時的な効き目もすぐに消えしまう。」(35ページ)…品質でも同じようなことが言えるんでしょうかね?
      • この理論はもう少し知りたいので、資料を探してみようかなと思っています。
  • 米山高範さんによるカメラの新商品開発の話に影響を受けているようです。

    • あるカメラメーカーにて、カメラの開発にあたり、カメラを使う目的である撮影そのものに注目。顧客が撮影した写真のプリントを見てまわり(当時はデジカメではなくフィルム)、実際に起きている撮影不良の内容を調査した上で顧客の潜在要求を汲んだ新しいカメラを開発、ヒット商品を生んだという。製品自体だけではなく、ユーザーの使用目的にも注目して成功をおさめた話。
    • 米山さんご自身がこのカメラ開発に直接関与されたわけではないが、この開発の話をもとに商品企画のモデルを示されたそう。そして、このモデルの話が、魅力品質の話に繋がっているそうで。
  • ほか、TQMで有名なジュラン博士にも影響を受けているようです。

    • 本題から外れますが、ジュラン博士については寡聞にしてよく知らず、パレート図の考案者であることや、日本の品質に与えた影響が知れたのは面白かったです
  • 新製品から成熟製品へ移行する際の競合優位性に影響する品質について、3つのレベルに分類されていました。(「私が伝えたいTQMのDNA (特集 TQMのDNA)」より)

    • 基本的な要求や規格への適合を達成した上で、更に明示された要求を満足するところに顧客満足があり、更に潜在的要求を実現して顧客歓喜へ、…という話らしい。面白い。