記録用ブログ

個人的な記録のためのブログ。主にソフトウェアテストの話題。

Kano Model(狩野モデル)を参考に品質のライフサイクルを想像してみる

先日、ソフトウェア品質シンポジウムの予習のために狩野モデル(Kano Model)に関係しそうな文献を読んだブログを書きました。

mejiro8.hatenablog.com

その後、X(旧Twitter)の他の方の投稿を見ているうちに、品質のライフサイクルに興味が湧いてきて、文献から得た内容のまとめと、自分の想像を書いてみたという記事です。

※「魅力的品質」「魅力品質」、両方の表記が考えられますが、ここでは「魅力的品質」で統一します。


----- 2023/08/29追記  ここから -----
X(旧Twitter)で、素晴らしい記事を教えていただきました。
「品質のライフサイクル」について知りたい方は、以下の、狩野紀昭さんへのインタビュー記事をご覧いただくのがよいと思います。 「品質のライフサイクル」についても触れられています。
atmarkit.itmedia.co.jp ----- 2023/08/29追記  ここまで -----

文献にはどのように書かれているか

Viewpoint this month(第112回)米国で「狩野モデル」の着想を得る ベースはお客とメーカーが対話できる「品質要素」』より(アイソス = ISOS : マネジメントシステムと国際標準化の専門月刊誌 26(7)=284:2021.7 p.8-13)

まずは、狩野 紀昭さんが書かれた文献。ライフサイクルと思われる記述が一部あり、以下のような話が書かれています。

  • 魅力的品質が、時間の経過とともに、当たり前になっていく
  • 当たり前になった後、もう一度、魅力的品質にできないか?

書籍「ソフトウェア・ファースト」より( 及川卓也著, 日経BP社, 2019年)

上記文献の2章 IT・ネットの“20年戦争”に負けた日本の課題と光明 要因3:サービス設計〜運用面での誤解に、次のような話が書かれていました。

かつては当たり前品質だったものが要求レベルが下がる例として、ローカライズの例が載っています。直感的に操作できるデバイスの普及、といった話が挙げられており、興味深いです。

具体例を想像してみる

他に、どんなライフサイクルが考えられるか? 想像してみました。

前述のローカライズの例と似ているのですが、ちょっと違う視点かも?と思って、自分なりに挙げてみます。 翻訳機能がなかった頃や、あっても精度が低かった頃は、海外のサービスで日本語マニュアルやヘルプページがあるのは有り難く、なくても仕方ないがあれば満足感に繋がりました。
一方、最近はWEBブラウザなどを使ってまずまず読みやすい翻訳結果が入手できるので、有り難みが薄まったような。更に翻訳の精度が上がれば、ほぼ無関心品質になると予想。

  • 無関心品質→(ユーザーの住環境や使い方の変化)→魅力的品質
    • 例:電気ポットの、電源コードを抜いても給湯できる機能

台所にあるコンセントの数が少ない家に引っ越した場合など、お湯を沸かした後は給湯を気にせず電源コードを抜けると嬉しい場合はありそうです。

  • 無関心品質→(ユーザーの高齢化)→魅力的品質
    • 例:テレビなどの家電のディスプレイに表示される文字の拡大機能

製品や外部環境が変わるだけではなく、主要ユーザー自身の変化によるライフサイクルもあるのかな?と。例えば、購入当初は標準サイズの文字で十分見えていたものの、視力が弱くなると、拡大機能があることが満足に繋がる場合もありそう、と考えました。

  • 当たり前品質→(価値観の変化)→一元的品質
    • 例:モノクロ撮影機能、モノクロ専用のデジカメ

私自身が写真が好きなので、カメラの例を。
昨今、カラー写真が撮れるデジカメでもモノクロのモードがついているのは珍しくないと思っています。私にとってはモノクロのモードがないと不満、あって当たり前、という感覚です。編集ソフトで白黒に仕上げてもいいんですけど、撮影時点でこれは白黒の方がカッコ良さそう、という場合はモノクロで撮れた方が嬉しい。

が、最近、モノクロ専用デジカメが発売されたと聞きました。カラー写真が多い中で敢えてモノクロ専用を選びたい人が相当数いるのだとすると、モノクロ写真を撮影できることが当たり前にとどまらずに満足に繋がることがあるのかなあ、と考えた次第です。

モノクロ専用デジカメについて参考:https://kakakumag.com/camera/?id=19457

このパターンはきっとありそう、何か例はないものか、と捻り出したのがコレ。
現代のデジカメにはオートフォーカスはあって当たり前の機能ですが、それでも被写体や環境によっては、フォーカスが迷ったり間違ったりします。難しい場面は経験則で予想できるので、普段はフォーカスが間違っても仕方なし…と思って終わりなのですが、条件が悪くてもきっちりフォーカスを合わせてくれると感動しますし非常に魅力に感じます。
うーん、もっと良い例がありそうで、悔しいなー。

想像してみて何を考えたか

今回あげた具体例は、私自身の想像の産物であり、異論反論はあると思います。

今回は自分一人で考えましたが、同じソフトウェアを開発している関係者同士で「何が魅力的品質か」「自分たちの製品の品質のライフサイクルはどうなるか」といった考えを持ち寄って議論すると面白そうだし価値観の可視化と共有にも繋がりそう、と思いました。
また、製品自体や関連するデバイス等の進化のほか、ユーザーの価値観や、競合・外部ツールなどとりまく環境の変化にも、ライフサイクルは影響を受けるのではないかと、感じました。